弁護士鎌倉のコラム

2016.04.10更新

こんにちは。 

突然ですが僕の趣味の1つは映画を観ることです。

ということで4/8に公開された『ルーム』を観てきました。

2016年ベストと言っても過言ではないほど素晴らしかったです。

この映画は、突然誘拐され7年もの間監禁生活を強いられた1人の女性と、5才の男の子が監禁部屋から逃げることを決意し、2人が世界を取り戻していくが・・・という物語です。

まず7年もの間監禁され、その間に1人の母親ともなった女性を演じたブリー・ラーソンの演技は圧巻でした。息子に世界を与えたいという母親としての愛情、そして、再び自分が過去に住んでいた世界を取り戻したいという1人の女性としての希望が強く生々しく伝わってきました。

そして、産まれた時からずっと小さな部屋に閉じ込められていた5才の男の子が、初めて空の広さ、鳥の鳴き声、土の感触などの『世界』を文字どおり肌で感じた時の戸惑いや喜びがあまりにも瑞々しく感動的でした。

ただ、世界を取り戻した彼女と、世界を獲得した男の子の2人のその後の人生にも困難は待ち構えています。

彼女は損なってしまった7年という時間の重さに打ちひしがれ世界に戻ることに躊躇いを覚えます。また、かつての小さな部屋が自分の世界であった男の子も、新しい世界にうまく溶け込むことができません。

そのような2人が未来を生きようと決意をするシーンは魂が震えるほど力強く祝祭的でした。

事実は小説より奇なり、といいますが実際に日本でも最近同じような事件が起きました。

実際に誘拐犯と被害者の女の子がどのような生活を送っていたのか、様々な情報が飛び交い、錯綜し、場合によっては被害者である彼女を責めるような意見もあるみたいです。

ただ、家族のもとに帰ることができたこの映画の主人公は、彼女のことを誰よりも愛する両親とでさえ、軋轢を感じ自分を、そして家族を責め立ててしまいます。

そのような行動をとってしまうほど、彼女の精神は不安定で張り詰めた糸のようにいつ緊張の糸が切れてもおかしくない状態でした。

きっと実際に起きた事件の被害者も同じ精神状態のはずです。

だからこそ僕たちは、想像に身を任せて事件のことを口にせずに、今はそっと彼女のことを見守るということ。それこそが部外者である僕たちが唯一できる優しさなのではないでしょうか?

 

 

投稿者: 弁護士 鎌倉鈴之助

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